甘く、苦く
第58章 末ズ【one step】
「…っ、」
自分がしたことにびっくりして
思わず携帯から手を放した。
「…なに、やってんだ。」
いい歳した大人が
一人でなにやってんだか。
バカらしくなってきた。
『もしもし?』
「…潤くん、あの…その、
俺、悪かったなって…
理解能力が足りなかったって
いうか…
ほら、俺、恋人だから…
もっと理解しなきゃいけないのに
全然理解できてなくて…
その上、潤くんに八つ当たりしちゃって…
ごめんなさい…」
声が震えてるのが、
嫌でもわかる。
…もっと、
……もっと。
素直になろう。
「あの、…俺、
潤くんを支えられてるのかな?」
『十分だよ。
俺が甘えちゃってて……
ごめんね。本当に。
泣かせないって…
あのとき誓ったのに。
和、泣いたでしょ?』
……泣いてなんかないけど、
傷付きは、した。
…あんまり変わんないか。
「ちょっとだけ…ね。」
『うわぁ~、マジかぁ。
ごめん。ほんとに。』
「…いいよ。もう大丈夫。
俺も責めたし…
お互い様ってことで、いいかな?」
『あぁ、そうだね。お互い様だよね。』
…潤くんも、俺も、
たぶんすこしだけ。
一歩前に進んだ。