甘く、苦く
第61章 櫻葉【恋、始めてみました。】
すーすーと
小さな寝息が聞こえる。
あれから、泣き疲れて
寝てしまったみたいだ。
風邪を引いてるのにも
関わらずこんなに
薄い布団をかけて。
バカじゃねえのって
思うけど。
そんなこと気にしないくらい
具合悪いんだろうなって
思ったら、可哀想で。
俺に移ったらいいのに。
そしたら相葉くんが
今度は俺の家に
来てくれるのに。
そんな悪い考えが
頭に過る。
……いや、だめだ。
こんな考えよくない。
相葉くんを傷付けてしまう。
「…相葉くん、」
そっと、頬に手を添えて
唇を重ねた。
自分が嫌いになりそうで。
……いや、もう十分
嫌いなんだけど。
嫌い。
こんな醜くて卑怯な
自分が大嫌いだ。
寝込みを襲うなんて、
最低だ。