甘く、苦く
第64章 にのあい【sunshine】
「俺だって、昔っから…」
「…もう黙ってろよ、」
泣きそうだった。
堪えてたものが
全部出てきそうだった。
だから、黙っててくれよ。
兄貴の体を力いっぱい抱きしめて、
耳元でこう囁いた。
『あいしてる』
って
そのあとの行為は、
とても淡々と進んだ。
気付けば行為は終わってた。
余韻とか、そんなのなくて。
兄貴はそそくさと
部屋を出ていった。
「…はぁ、」
初めては、兄貴と。
それがようやく叶った。
少しの達成感と、
してしまったことへの
後ろめたさ。
これから兄貴とどうしていこう。
兄弟で、あんなこと──…
もう取り返しのつかないことを
してしまった俺たちは、
どうしたらいい…?