甘く、苦く
第65章 お山【I LOVE YOU】
もう諦めた方がいい。
歳なんだから。
そういうんじゃなくて。
「……」
無言で寝室に入る。
シートが冷たい。
ふたりだったら、
「つめたいね。」なんて言って
笑い合えたかもしれない。
ふたりだったら、の話。
「…翔くん、」
ねぇ、いつになったら
一線を超えられる?
どうしたら、
一線を超えられる?
なにをしたらいい?
どうしたらいい?
…教えてよ─────………。
「……もういやだ。」
もともと俺が好きで
告白した。
誰にもとられたくないから。
誰にもあの笑顔を見せたくないから。
Jrの頃から、
翔くん一筋だ。
「あれ?
まだ起きてたの?」
「…翔くん、」
「ぅわっ、どうしたの?」
翔くんを布団の中にいれて、
ぎゅっと抱き締めた。
離れていかないように。
俺から、離れていかないように。
「…ねえ翔くん、」
「うん?」
「俺のこと、好きって言って…?」
「?
好きだよ。智くん」
「…じゃぁ、」
なんで?
じゃあなんでダメなの?
その先を望んでいるのは
きっと俺だけなんだ。
俺が望んでいるその先は
翔くんには必要が無い…?
「ねぇ、智くん、どうしたの?
なんか嫌なことあったの?」
……あぁ、もう。
「言ってくれなきゃ、
わかんないよ。」
……こっちだって。
「ほんとにどうしたの?」
……きっと俺だけが
望んでいる。
必要性のないもの、なんだ…