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(仮)執事物語

第2章 柔らかな炎〔葛城〕


葛城さんと手を繋ぎながら、宛てもなく街を歩く。すると私の好きなジュエリーブランドのお店の前に差し掛かった。

「あやかお嬢様はこのブランドがお好きでしょう?見て行かれますか?」

そう言ってにこりと笑う葛城さん。少し目尻が下り、ちょっと皺が寄る彼の笑顔に胸がキュンとする。

好きな人が自分の好みを把握してくれている。それも嬉しい。

私は笑顔で頷くと、ワクワクしてお店の中へと足を踏み入れた。

素敵なジュエリーの数々に心が躍る。

私は夢中になってショーケースの中のジュエリー達を眺めた。

「ふふっ。宝石に負けないくらい、あやかお嬢様の瞳もキラキラしておりますね?そんな風に私の事も見て下さいますか?」

そう言って揶揄う様に私の顔を覗き込む葛城さん。顔が近くてドキッとする。

当たり前じゃない!

宝石より何より、私は葛城さんの事が大好きなんだから。

「先程のマフラーを選んで下さったお礼に、私もあやかお嬢様にお似合いになるジュエリーを選ばせて下さい」

そう言うと葛城さんは、ショーケースの中を覗き込み、スタッフに声を掛けた。

「こちらのブレスレットを見せて頂けますか?」

「畏まりました。こちらですね?」

スタッフが葛城さんに確認しながら、商品をジュエリートレイへと並べて行く。

葛城さんが選んでくれたのはピンクゴールドのチェーンにカーネリアンで四つ葉のクローバーを模った物だった。

「思った通り。あやかお嬢様の白いお肌にピンクゴールドが映えますね?」

そう言うと、葛城さんは私の手をとり、手首に軽く口付けを落とした。

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