(仮)執事物語
第2章 柔らかな炎〔葛城〕
その流れるような仕草、そしてとても自然にそれをやってのける葛城さんに、お店のスタッフも思わず溜息を漏らし彼をうっとりした瞳で見つめた。
「こちらを頂きましょう」
そう言うと葛城さんは、財布からカードを取り出し、スタッフへと差し出すと、彼女はハッと吾に返り、彼からカードを受け取った。
「プレゼントでしたら、お包みしましょうか?」
「いえ、このまま頂きます」
「畏まりました。それではお待ち下さいませ」
そう言うとスタッフはお店の奥へと向かい、会計を済ませると箱と保証書をショッパーに入れ、私達の所へ直ぐに戻って来た。
「お待たせ致しました」
そう言うと彼女はペンを葛城さんに手渡し、サインを書く様に促した。
彼はそれにサラサラとサインを書くとショッパーを受け取る。
「有難うございました。またのご来店を心よりお待ちしております」
そう言って頭を下げるスタッフに見送られ、再び街の喧騒の中へと戻る私達。
指を絡めて手を繋ぐ手首には、葛城さんに買って貰ったばかりのブレスレットが揺れている。
「葛城さん、有難う。大事にするわね?」
いつも沢山の気持ちを貰っているけれど、形のある物を貰うのはこれが初めてで気持ちが高揚する。
「喜んで頂けて何よりです。しかし……」
そう言うと葛城さんはふと足を止めた。
「どうしたの?」
彼が立ち止まったので、私も足を止め彼の顔を見上げる。