(仮)執事物語
第10章 VACANCE DE L'AMOUR〔葛城〕
「こっちなら人がいなさそうだぞ?」
男性の声と共に、近付いてくる気配を感じた。その声を聞いて葵は快楽とは違う身体の強張りを葛城の手に訴える。
葵の緊張を感じ取った葛城は、一瞬手を止めるが、後に続いて聞こえた女性の声が自分達と同じ目的である事を知り、再び手を動かした。露わになった乳房だけは隠して。
こればかりは、他の男には見せられない。見せたくない。
再び動き始めた葛城の手に、葵は非難めいた視線を彼に向けたが、葛城は「彼等に見せつけて差し上げましょう」と言って妖しい笑みを浮かべるだけだった。
葵は、ふるふると頭を振って抵抗してみるが、葛城はそんな葵の抵抗を無視し、指を動かし続ける。既に高みの頂き寸前まで昇り詰めていた葵の身体は、彼女の心の抵抗も虚しく、快楽を甘受して震えるばかりだ。
そうこうしている内にも、彼等の燥ぐ声は、葵達の身を隠している木の反対側まで近付いて来ていた。
しかし、葵はもう限界だった。葛城の指が彼女の固くなった芽を摘む様にキュッと摘まみ上げると、それまで必死に耐えていた声を上げ、葵は高みへと昇り詰めてしまった。
「あああああんっ!!」
葵の上げた声が二人に届いたのだろうか。燥ぐ声がピタリと止んだ。そして慌てた様に水を掻き分けて歩く音が遠ざかって行く。
本来の葵であれば、葛城に抗議をしたであろうが、快楽に溶けていた彼女は、葛城の胸に背中を預けたまま、肩で呼吸をするだけだった。