(仮)執事物語
第11章 この先もずっと…〔黒崎〕
「夜中に男の部屋に女が来る意味、分かってんだよな?」
私がマコ兄の抗議の声を無視して勉強を始めると、いつの間に後ろに居たのだろう。マコ兄の低い声が耳元でそう言った。何事かと思う間もなく、私は抱き上げられ、ベッドの上に投げ出される。
「えっ!? ちょっ!! マコ兄!?」
私は慌てて置き上がろうとしたが、その前にマコ兄が覆い被さって来た。
「なな? お前、去年のバレンタインに本命チョコ、くれたよな?」
私を組み敷き、上から見降ろしてマコ兄が言った。確かに、本命チョコは渡したけど。ホワイトデーに何のお返しも返事もくれなかったマコ兄。それは、無言の拒否だと思った。唯、はっきりと断れば今までの関係が壊れてしまうから。だから何も言ってくれないのだと私は解釈した。私はそれに甘えて、今でも幼馴染の顔をして、こうしてマコ兄と接しているのだ。
マコ兄は、解いたネクタイで私の両腕を一つに括り付ける。そして脱いだシャツを床に落とすと、こう言った。「今、返事をしてやるよ。俺がななの事をどう思っているかをな」と。そして私の唇に噛みつくように口付けた。
「んんっ……!?」
「来春卒業だし、いいよな?」
そう言いながら、私の服の裾から手を忍ばせて来るマコ兄。優しくて面倒見の良いお兄ちゃんが、男へと豹変した瞬間だった。