テキストサイズ

(仮)執事物語

第11章 この先もずっと…〔黒崎〕


 「あー……、早く一人前になりたいよなぁ……」

 「そんなに急がなくても、いいんじゃないの?」

 「いや、早く一人前になって、ななを嫁さんにしないと!」

 そう言うとマコ兄はニッカリと笑う。

 「え?」

 「何だよ、その驚き方は……。嫌なのか?」

 私が思わず訊き返すと、それを嫌がっているのだと思ったのか、不安そうな目をして私の顔を覗き込むマコ兄。嫌なワケないじゃない。でも、私もまだ未熟で。一人前のメイドにも成れていないのに。

 「だからだろ? 一人前になったメイドを辞めさせたら、邸には痛手になるけど、未だ見習いの内なら、そこまで痛手にならないからさ?」

 「酷い……。私が必要じゃないみたいに……」

 「馬鹿だな。俺がななを必要なんだよ。世界で一番、お前を必要としているのは、俺なの!」

 そう言うとマコ兄は、私の事を抱き上げた。「やっぱり、風呂から上がるまで我慢出来ない」と、私をベッドへと下ろすと、服を脱いで覆い被さって来た。これは朝まで寝かせて貰えないパターンだ。でも、そこまで愛されているのって、女冥利に尽きるよね?

 「なーな? こっち向いて?」

 マコ兄が、私の顎を捉え自分の方へと向けさせる。真っ直ぐな黒く濡れた瞳。その中には私だけが映っている。私が目を閉じれば、降りて来る優しい口付け。それを合図に、私はマコ兄の首に腕を回す。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ