(仮)執事物語
第14章 【特別編】ココロとカラダ〔高月〕
「高月、すまないが席を外してくれないか? 父さんと二人で話がしたい」
僕がそう言うと、高月は「畏まりました」と言って、部屋を出て行った。それでも僕は辺りを警戒し、身を乗り出すと声を潜めて父に尋ねる。
「まさか、僕の秘密を高月に?」
「いや、話してはおらん。話すも話さんもお前の自由だ」
「もしバレたら……?」
「高月は一流の執事だ。主の秘密を他で話す心配はない。何も困る事なんてないだろう?」
「ですが……」
「そんなに心配なら、騙し通して見せろ。お前は時期、我がグループの頭首となる人間だ。身近な人間の一人や二人、騙せなくてどうする?」
「……分かりました」
「斗夢よ。今のお前の実績と実力があれば、誰も文句は言うまい。私は別にお前が戻りたいと言うのであれば、構わないと思っているよ」
そう言うと父は話は終わったとばかりに、葉巻に火を点け口を閉ざした。僕は父に頭を下げ、部屋を後にする。僕は長い廊下を歩きながら、父の言葉を繰り返し思い出す。「お前が戻りたいと言うのであれば」だなんて、今更だ。そんな事をして何になる? 僕の今までは何だったのだ?
「高月、帰るぞ」
僕は玄関に控えていた、高月に声を掛けると、父と母の暮らす本邸を後にした。取り敢えず、邸に戻って城本と話さなければ。僕が一番信頼をしているのは、祖父の様に優しく、父の様に厳しい城本だ。彼なら良いアドバイスをくれる。僕はそう信じていた。