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(仮)執事物語

第14章 【特別編】ココロとカラダ〔高月〕


 しかし、城本の意見は父と同じ物だった。彼は優秀な執事だから心配はないと。城本は高月に全ての業務の引継ぎを行うと、父が海外に持つ別荘の管理人として、旅立ってしまった。そこで管理人として悠々自適な生活を送るんだとほくほくしながら。

 結局、僕の秘密を邸内で知るのは、メイドの榊原だけになってしまった。それでも、自分一人でないだけマシなのだろうけど。僕の住む別邸の使用人は、ほんの十名程。そして僕を幼い頃から知っているのは、執事である城本とメイドの榊原だけ。他の使用人は、僕が二十歳を迎え一人で別邸に住む事になってから採用した者たちばかりであった。

 僕は城本が去った後、身の回りの世話を榊原に任せる事にした。それを、高月は不審に思った様だった。幾ら旧知の仲だとは言え、主人直属である筈の自分を差し置いて何故だと言う気持ちがあったのかも知れない。自分は信頼されていないのかとも思ったのかも知れない。僕としては、そんなつもりはなかったのだが。結果的に、僕のこの選択が、高月に秘密を知られる事になってしまったのである。

 唯、高月は僕の秘密を知ってからも、それを表に出す事はなかった。初めて会った時に「誠心誠意お仕えする」と言う言葉通りに、彼は僕の補佐を完璧に努めてくれた。経験豊富な城本が「一流の執事だ」と太鼓判を押しただけの事はあり、あっと言う間に部下である使用人達の信頼も集めた。僕もある事を除いては、高月の事を信用し、信頼していた。そう。僕の秘密以外については。

 高月が邸に来てから半年の月日が流れ、僕はすっかり騙しおおせているのだと思って安心をしていた。だからすっかり高月に対しての警戒心が薄れていたのだ。

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