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(仮)執事物語

第14章 【特別編】ココロとカラダ〔高月〕


 ある休日の事。気晴らしに庭を散歩していた時の事だった。庭の中央では、高月が庭師を相手に季節の花の植え替えの相談をしている所だった。僕はそんな彼等を横目に通り過ぎると、邸の裏手にある雑木林に向かった。この林にはハンモックが設えてあり、僕は時々そこで本を読むのが気に入っていた。小鳥たちの囀りに耳を傾けながら、ページを捲る至福の時。時折、風がサァーと吹くと、木々達が騒めく。僕はこの小さな自然の中の音を子守歌にいつの間にか眠ってしまった様だった。

 肌寒さに身体が震え目が覚める。すると、目の前で高月が僕の顔を覗き込んでいた。いや、正確に言うと彼の視線は僕の顔ではなく、もっと下を見ている。彼は僕が目ざめた事に気付くと、ニヤリと口の端を吊り上げた。次の瞬間。僕の身体は反転し、ハンモックから転げ落ちる。幸い高月が抱きとめてくれたから、怪我には至らなかったのだが、手がハンモックのネットの間に引っかかり、身動きが取れない。いや、そればかりではない。僕の着ていたシャツの釦は全開にされ、胸を潰す為に着用しているバストホルダーが見えてしまっていた。

 高月は僕を地面の上に下ろすと、僕の前にしゃがみこみ、これはどう言う事かなのを尋ねる。僕が押し黙っていると、高月はそんなに自分は信用がないのかと、大袈裟に溜息を吐いて見せた。そして、仕方が無いので僕の身体に訊いてみようと言って、バストホルダーのファスナーを下した。ぷるんと揺れながら、僕の胸が解放される。そう。僕は女だった。僕の上も全員女。両親が最後の望みを賭けて作った子である、僕も女として生まれ落ちた。一族の本家の子供達が皆女では、分家からの非難が上がる事を恐れた両親が、僕を女ではなく、男として育てたのだ。そして、それを知っているのは、両親とその当時父の執事として働いていた城本、ハウスキーパーとして働いていた榊原だけだった。

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