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(仮)執事物語

第14章 【特別編】ココロとカラダ〔高月〕


 「お可哀想に……」

 高月はそう呟く。僕は同情なら止めてくれと高月を睨むが、高月はそれに怯む事なく、僕に近付くと両の掌で僕の胸を包み込んだ。

 「男として偽って来られたのでしたら、女の悦びもご存知ないのでしょうね?」

 そう言いながら、高月はゆっくりと僕の膨らみを持ち上げる様にして押し揉む。僕は身体を捻ってそれから逃れようと試みるが、ハンモックに捉えられた両腕のせいで、それもままならない。高月は僕の顔を見ながら反応を愉しんでいる様に、口角を吊り上げている。

 「ここを……触られた事は?」

 高月が胸の尖りの周りをゆっくりと指でなぞる。輪の形に沿ってゆっくり。まるで羽根で触られているみたいにふわふわと軽く。それが擽ったくて身を捩るが、逃げても逃げても高月の手は追ってくる。

 「ふふっ。勃ち上がってきましたね?」

 高月はそう言うとペロリと赤い舌で唇を舐める。相変わらず彼の視線は僕の顔を捉えたまま。僕はそれが恥ずかしくて目を瞑り顔を背けた。それでも尚、肌を刺す様な高月の視線を感じてしまう。

 「斗夢様は私の顔を見るのがお嫌なようですね?」

 耳元で高月がそう囁く。僕が何も答えず身を固くしていると、"しゅるしゅる"と言う衣擦れの音が聞こえ、何かが目元を覆った。「ご覧になりたくないのでしたら、目隠しをして差し上げましょうね」と言って、高月は僕の頭の後ろで目元を覆う布を縛る。それが不安となって、僕の胸は鼓動を速めた。自分で意思を持って見ないのと、見られないのとでは雲泥の差がある。手の自由を奪われ、視界の自由を奪われ、僕には為す術がなかった。

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