(仮)執事物語
第14章 【特別編】ココロとカラダ〔高月〕
高月の手が僕の肌の上を滑る。胸を。脇腹を。背中を。二の腕を。視界が閉ざされてしまった僕には、次に高月がどこに触れてくるかを知る術がない。その結果、僕の身体は敏感になり、少し触れられただけでも大きな反応を返してしまう。高月はそれが楽しいらしく、クスクスと笑いながら、大きな掌で僕の身体のあちこちを弄った。
「高月っ……。お願いだ……。もう止めてっ……」
僕は情けない程にか細い声で高月に懇願する。すると高月は、「可愛らしい声も出るんですね」と言って、僕を馬鹿にする様にまたクスクスと笑った。屈辱だ。使用人風情にこんな事。僕は唇を噛み締める。屈辱だと思えば思う程、怒りで身体が熱くなる。この時、僕は知らなかった。屈辱と羞恥が快楽へ変換される事を。
「もっと可愛らしい声をお聞かせ下さい」
そう言って高月は、僕の首筋を舌でなぞる。高月の赤い舌。目を背ける前に見た彼の舌の色を思い出す。あの舌で僕の肌は今、犯されているのだ。高月の舌はねっとりと僕の首筋を舐めたかと思えば、ちろちろと擽る様に鎖骨の上を行き来し、次第に下りて行く。その間、何とも言えぬゾクゾクとした感覚が僕の背中を這い回っていた。高月の舌は、胸元へ下りると、胸の膨らみに沿って、その形を確かめるかの様に動き回る。その動きは、外側から次第に中心へと。胸の先端へと向かって移動して行った。
もう少しで先端に触れそうになる舌。しかし、高月の舌は、それに触れる事なく、ゆっくりとその周りを這いずり回る。時折、チュッと音を立てて高月がその周りに吸い付くが、彼の唇が僕の胸の先端を捉える事はなかった。それがなんだかもどかしいだなんて。僕は一体、何を考えているんだろう。