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(仮)執事物語

第14章 【特別編】ココロとカラダ〔高月〕


 「なあ、斗夢。ここは賑やか過ぎるし、ちょっと暑苦しい。テラスで話さないか?」

 中学から大学時代まで共に学んだ親友にそう言われ、僕達はテラスに出る。肌を撫でる冷たい風が心地良い。学生時代、まだこの邸に住んでいた頃は、友人を招いて夜通しこの国の未来について語り合ったものだった。ほんの数年前の事なのに、何だか懐かしい。

 「久し振りに逢ったけど……。何か雰囲気が変わったな?」

 手摺に凭れながら、友人──雨宮(あまみや)は、そう言って僕を見る。どこら辺がと尋ねると、「どこだかは分からないが、雰囲気が柔らかくなった」と言われる。それはきっと大人になったからだと答えれば、「そうかも知れない」と言って笑った。雨宮は酔っているのか、「お前のココも立派に成長したみたいだしな」と、僕の股間をギュッと握る。正直、この時は焦った。高月に渡された下着を身に着けていなければ、女だとバレていたかも知れない。

 「これで、何人の女を啼かせたんだ? 白状しろっ!!」

 そう言いながら、雨宮は僕にじゃれつく様に僕の首に腕を回すと、チョークスリーパー宜しく、首を軽く締めてくる。男同士の単なるじゃれ合いだ。久し振りに逢って、雨宮も学生の頃の気分に戻っていたのだろう。僕は笑いながら雨宮の腕をタップし、ギブアップだと告げると、「もう少し抵抗しろよ。つまんないだろ?」と雨宮は口を尖らせた。

 (こう言うところは昔から変わらないな……)

 背が高く、爽やかな笑顔。人懐こい性格。無邪気。女の子がときめく要素を多く持つ雨宮。モテる男だが、婚約者以外は見向きもしない。そんな一途な所も好感が持てる。僕は雨宮をそんな風に見ていた。

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