(仮)執事物語
第14章 【特別編】ココロとカラダ〔高月〕
「悪い、遅くなった。君のお姉様に捉まってしまってね……」
そう言って微笑みながら、僕にグラスを差し出す雨宮。僕は、有難うと言ってそのグラスを受け取る為に手を伸ばす。震えていないだろうか。顔は上手く笑えている? 僕は不安な気持ちを押し殺し、快楽に堪えながらグラスを受け取った。「乾杯」と言って雨宮が、グラスを合わせる。僕も微笑ながらそれを受け、シャンパンを口に含んだ。焦って喉がカラカラだ。それに身体が火照って仕方が無い。冷たいシャンパンが熱い僕の身体の中を流れて胃に落ちると、胃液と混ざり合って身体の温度と馴染んでしまう。だから僕は何度もグラスを口へ運んだ。
「そんなにハイペースで飲んだら、酔うぜ? 君はそんなに強くないだろう?」
雨宮は僕の顔を心配そうに覗き込むと、ゴクリと喉を鳴らした。そして僕のグラスを奪うと、それをガーテンテーブルの上に置いた。
「斗夢……。さっき"雰囲気が柔らかくなった"って言ったけど……。違うな。色っぽくなったんだ……」
そう言うと雨宮は、僕の腕を引き、突然僕に口付けてきた。突然の出来事に、僕はどう対処して良いのか分からず立ち尽くす。その間にも、雨宮の舌は僕の唇を割り、口内へと侵入してきた。何が起こっていると言うのだ。雨宮は僕を男だと信じている筈だ。それなのにどうしてこんな事を……?
「斗夢……。俺は来月結婚する。その前に……、君に伝えたかった……。ずっと君を想っていたと……」
耳元でそう囁きながら、雨宮が僕の耳を舐める。穴の中に舌を入れられ気持ちが悪い。僕は、耳を舐められるのが嫌いだ。
「雨宮……っ!! 止めろっ!!」
僕はそう言って彼を突き放す。その瞬間に、身体に取り付けられた玩具達が、存在をアピールするかの様に大きく震え出した。