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(仮)執事物語

第14章 【特別編】ココロとカラダ〔高月〕


 「痛かったでしょう? すみません」

 そう言って高月は、僕の肩に、項に口付けを落とす。頭を撫で、背中を撫で、僕を労う様に。そして後ろからギュッと僕を抱き締めると、耳元でこう囁いた。

 「ずっとこうしたかった……。お慕いしております。斗夢様……」

 高月は背中に、肩に何度も口付けながら、僕への気持ちを打ち明けてくれる。初めて会った時から、僕が"女"だと気付いていた事。無防備に眠る僕に悪戯心で手を出してしまったあの日。僕達の男と女の関係が始まったあの日から、ずっと気持ちを抑え続けていた事。憎しみでもいいから、自分の事を想って欲しくて、つい意地悪な事をしてしまうと言う事。今日、雨宮に嫉妬した事。そして僕を自分の物にしようと決意した事。沢山の想いを口付けの雨と共に降らせる高月。

 「貴女は……私の事をどう思っておいでなのですか?」

 そんなの。好きに決まっている。僕が抱かれたいと思ったのは、高月だけだ。雨宮に口付けられた時。嫌で仕方が無かった。遠くで僕達を眺めて笑っている高月が憎くて堪らなかった。僕を愛しているからと言って、あんな風に虐めるなんて、酷過ぎる。どうしてああなる前に駆けつけてくれなかったのだ。そう言って僕は高月を責める。

 高月は父と母に頼まれていたのだ。僕が"女"として生きられる様に。誰か適当な相手を見繕ってくれと。雨宮なら、子供の頃からの気安さで受け入れられるのではないかと思ったのだと言う。けれど、見ている内に嫉妬でどうにかなりそうになり、気が付いたら僕達の中に割って入ってしまったのだと。

 「貴女が女性として生きなければ、この家は終わってしまいます。それ以上に、奥様と旦那様は斗夢様に幸せになって頂きたかったのです。女としての生を。悦びを感じて頂きたかったのだと思います」

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