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(仮)執事物語

第3章 極光の下で〔杜若〕


「でっ……でもっ!駄目だよっ!」

「どうして? 泥パック、塗ってるだけなのに……」

「え!?」

莉玖にそう言われて腕を上げると、確かに皮膚に白い泥の様なものが、付着していた。

やだ。私の勘違いだったの!? 恥ずかしい……。

もう、莉玖ったら紛らわしいよ!

……って言うか、いつの間に泥を持っていたのよっ!

そんな私の動揺を知ってか知らずか、莉玖は私の腕を見ると残念そうに呟いた。

「でも、お湯の中だと直ぐ落ちる……な……」

「まあ、お湯の中だしね……。じゃあ、温まったらパックしよ?」

「ん……。分かった」

それから私達は泳いでみたり、たゆたってみたりして暫く遊んだ。

「はぁ……結構、熱くなって来たかも……」

「じゃあ……塗る?」

「そうだね。じゃあ、塗りっこしようか!」

私達は浅瀬に移動すると、随所に設置してある桶から白い泥を掬ってお互いの顔や身体に塗り合った。

ブルーラグーン内では、お湯に浸かりながら、お酒を楽しめる所もあり、スタッフがトレーにグラスを乗せて歩いている姿を見かける。

また、音楽フェス等もイベントがあり、温泉に浸かりながら音楽やダンスを楽しめるコンテンツもあるのだと言う。

日本の温泉の楽しみ方とは、一味も二味も違うアクティビティだ。

「ふふっ。莉玖の顔……真っ白!」

「りるも真っ白……」

お互いの顔にシリカ泥を塗り終えた私達は、顔を見合わせて笑い合う。

周りを見回せば、私達と同じ様にカップルがお互いに泥を塗り合っていたりしていた。

皆、幸せそう。

私達もそう見えているのかな?

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