(仮)執事物語
第4章 冬の蛍〔黒崎〕
そんなやりとりを何度か繰り返している内に、クリスマスの日を迎えてしまった。
結局、黒崎さんとのデートの約束は出来ず仕舞。
夜も一緒に過ごせるのかすら分からなかった。
陽が傾き始めると邸の中は、パーティの準備で慌ただしくなる。
私はメイド長の安岡さんに髪を結って貰い、ドレスを着つけて貰ってパーティに参加をした。
取り敢えず、お祖父様の孫娘としての責務は果たさなければならない。
私は笑顔を作り、ゲストの方々をもてなしながら、何とかパーティをやり過ごした。
パーティが終わり、最後の一人を見送る。
最後のゲストはロートマン商会の若きCEOであるウィリアムさん。
背がもの凄く高く、そしてとっても美形な方。
それは招待客の女性の殆どが、彼の美貌に見惚れるくらいだった。
私も彼に見つめられると、少しだけドキドキしたけれど、私には黒崎さんが居る。
私にとって、彼の困り顔に勝る人なんて、この世に存在しないのだもの。
「恵里奈お嬢様、申し訳ございませんが、ロートマン氏を空港までお見送りに一緒に行って頂けませんか?」
「え?何故!?」
「この後、氏はロンドンに戻らなければなりません。羽田にチャーター便を待たせて居られるそうで、そこまでヘリで送らせて頂く事になりましたので…」
「それって……?」
「お嬢様のお望みの夜景スポットデートは出来ませんが、東京の夜景をご覧頂く事は何とか叶えて差し上げられそうです。それでは駄目でしょうか?」
そう言うと黒崎さんは、胸の前で祈る様に手を合わせ、私の返事を固唾を飲んで待つ。
そんな彼の姿も大好きな私は、笑顔を作ると頷くのだった。