(仮)執事物語
第2章 柔らかな炎〔葛城〕
私が車を降りると、どこから来たのかスーツを着た男性が私達の許へとやって来て足を止める。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
そう言うと男性は深々と頭を下げた。良く顔を見ると、家によく出入りをしている、このデパートの外商部の中嶋さんだった。
私達は彼の後に続き、エレベーターに乗るとVIP専用のフロアへと降り立つ。
このフロアの個室でお茶を頂きながら、欲しい物を担当者にお願いして揃えて貰うのだ。
荷物が多ければ、外商担当者が家まで送り届けてくれるので、予め担当者に来店を伝えておけば、一人でフラッと来ても買い物は楽しめる。
「呼びつけて下されば、お邸に伺いましたのに…」
そう言うと彼は『どうぞ』と言って扉を開けて私達を部屋の中へと促した。
奥のソファへと座ると、デパートの制服に身を包んだ女性が、入って来る。絶妙なタイミング。
どこかで見ていたのかしら。
「それで、本日はどの様な物をお求めですか?」
ソファに落ち着きお茶を頂くと、早速、中嶋さんが尋ねて来る。
「お祖父様へのクリスマスプレゼントの相談に参りましたの」
私がそう告げると、彼は微笑みながら頷いた。
「成程。それでお邸には呼んで下さらなかったのですね?内密にしたい……と」
「ええ、そうなの。お願い出来ます?」
「勿論ですとも!何かアイテムはお決まりですか?」