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(仮)執事物語

第2章 柔らかな炎〔葛城〕


「そうねぇ……。コートと手袋、それから帽子を見繕って頂けます?」

私がそう言うと、中嶋さんは『畏まりました』と言って立ち上がり、電話で各売り場に連絡を入れる。

お祖父様は、このデパートでもスーツやシャツ等を買う事があるので、彼等はサイズを把握してくれているので楽だ。

暫く談笑していると、次々に売り場から商品が届けられる。中嶋さんはその中から、コートを手に取ると私へと向けて広げて見せてくれた。

「こちらのカシミアのコートは軽くて暖かいので、人気の商品でございます。今年の流行の……」

そう言って色々と説明をしてくれる。お祖父様の好きそうな色やデザインも把握してくれているので助かった。

「ねぇ、葛城さん?こちらのキャメルとこの深いボルドーのどちらがお祖父様に似合うかしら?」

そう言って私が葛城さんに尋ねると、彼は傍に寄って来て真剣な目をして二つを見比べる。

「そうですね……。旦那様は既にキャメルのコートはお持ちですから、こちらのボルドーが宜しいのではないかと思いますが……」

「やっぱり!そう思う?それでは、このコートとこちらの黒のボーラーハットと…」

私は持って来て頂いた商品の中から、コートに合いそうな物を選んでいく。

お祖父様へのプレゼントを選び終えると、私は中嶋さんにこっそりと、少しカジュアルな紳士服を持って来て貰うように頼んだ。

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