(仮)執事物語
第2章 柔らかな炎〔葛城〕
「……? まだ、何かお求めになるのですか?」
プレゼント選びが終わったにも関わらず、腰を上げない私を見て、葛城さんが首を傾げる。
「ええ。まだ、あるの。だから葛城さんも座って下さる?」
私が彼を見上げてそう言うと、葛城さんは『畏まりました』と答えてから、向い側の一人掛けのソファに腰を下ろした。
お代わりの紅茶を頂きながら待っていると、再び各売り場の店員達がハンガーラックを押しながら次々と現れては退室して行く。
葛城さんは、お祖父様へのプレゼントだと思っているのか、早速立ち上がるとラックの前へと歩み寄り、品定めを始めた。
「あやかお嬢様? 旦那様のお召し物にしては、少しサイズが大きいのではありませんか?」
そう言って彼が私の方を見たので、私は立ち上がると彼の傍へと近付いて真実を告げる。
「これは葛城さんの為に持って来て頂いたの」
「私の……? はて? 何故ですか?」
「だって……。折角のデートなのに執事服じゃあ……ねぇ?」
そう言って私が葛城さんの服に目をやると、彼は合点がいった様に頷いた。
そして吊るされた洋服達の中から、自分に似合いそうな物をピックアップする。
「こんな感じは如何でしょうか?」
そう言って彼は選んだ服を自分の身に当て、私の方へ見せてくれた。
彼が選んだのはタートルネックのセーターに細身のボトム、そして上着はチェスターコート。