(仮)執事物語
第6章 聖夜に誓いのくちづけを〔高月+葛城〕
食事中にそのスイッチが入れられてしまったらと思うと、不安で胸がドキドキする。しかし、その高鳴りは不安からではなく、期待感なのかも知れないとゆきは思った。
高月は自分の扱い方を心得ている。やはり自分のパートナーは彼を措いて他にはいないだろうと思う。
葛城とではこうはいかない。彼は根が真面目過ぎる。高月の様に媚薬を使ったり、玩具を使う事等、考えもしないだろう。そんな物を使わなくとも、彼の体力は十分魅力的ではあるが。
ゆきはダイニングに着くと、白河に椅子を引かれて席に着く。向かい側には夫である高月。祖父が日本に滞在している時は、ここに祖父が加わる。そんな彼は今、アメリカだ。
オードブルが運ばれて、ディナーが始まる。ここではまだ、スイッチは入れない。ゆきは下着の中に何があるのかを知っているのだろう。彼がそれのスイッチを持っている事も。
談笑しながら、食事は進んで行くが、いつスイッチが入れられるのかと緊張しているのだろう。表情が固い。そんな彼女の様子に高月はほくそ笑む。
ワインを勧め、少し妻の顔が赤味を帯びて来たところで、そろそろ頃合いかとジャケットのポケットに手を忍ばせる。
アルコールにより、体温が上昇し、媚薬の効果も高まっている事だろう。そして酔いによって、注意力も散漫になって来ている頃だ。
高月はポケットの中の小さなリモコンに触れると、それの突起をスライドさせた。
"ガチャン!"
突然、襲われた快楽に、ゆきは思わず持っていたスプーンを皿の上に落とした。ディナーは終盤に差し掛かり、フルーツの後のデザートを味わっていた時であった。