(仮)執事物語
第8章 カウントダウンは甘く蕩けて〔葛城〕
私は彼の寝顔を暫くの間、見つめていた。キリッした形の良い眉。閉じられた目を縁取る、少し長めの睫毛。スッとした鼻筋。
私はそれらを指先でそっと撫でる。彼が起きない様に、軽く。ゆっくりと。そして私の指は彼の唇へと到達する。
少し薄めの唇。もう何度も口付けているけれど、相変わらず口付ける時はドキドキしてしまう。
この唇が愛の言葉を囁き、時に私を快楽へと導いてくれるのだ。
そんな彼の唇を見ているとちょっとした悪戯心が涌いて来る。
彼が目を閉じている今なら恥ずかしくないかも知れない。私は葛城の唇にそっと自分の唇を押し当てた。
ほんの少しの間、彼の温かい唇の感触を味わう。寝込みを襲っている様で、私の胸は少しドキドキと高鳴り触れた唇からじわりと熱が広がって行く。
「ん…………」
彼が身動ぎをしたので、気付かれてしまったのかと、慌てて唇を離そうとした刹那。頭の後ろに大きな掌が廻り、私の唇が離れるのを阻止した。
それに驚いた私が唇を開いた瞬間、彼の舌が私の唇を割り、口の中へと滑り込んで来る。
葛城は私の頭を捉えながら、ゆっくりと身を起こすと、私をソファの背凭れへと縫い付け、深く口内を探った。
絡め取られる私の舌。逃げる様に舌を回転させると、彼の舌がそれを追いかけ捉える。
彼から送られてくる唾液を飲み下すと、私の身体は彼を迎え入れる準備を始め、体温が上昇していく。