(仮)執事物語
第8章 カウントダウンは甘く蕩けて〔葛城〕
荷物を片付けに行こうとする背中に抱き付き、拾い背中に額を押し当ててそう言うと、彼が息を漏らす様に笑う。
私の行動なんて、お見通しなのだろうけれど。私だって、最近は葛城が何を思ってそうするのかが、分かって来ているんですからね!
「私は意地悪な事をした覚えは、ございませんが……?」
彼の腰に回した私の腕を擦りながら、彼はそう言う。
「意地悪よ。折角、二人で旅行に来ているのに、別々にお風呂に入るの?」
そう言って葛城の顔を覗き込むと、彼は執事スマイルで私を見ながらこう答えた。
「お背中を流せと仰るのでしたら、従いますが……」
「もう!やっぱり意地悪よ。貴方はここに"執事"として来ているの? それとも私の"恋人"として?」
「……ふっ。意地悪なのは貴女の方でしょう? 恥じらって逃げるかと思えば、そんな事を言って私を煽る……」
そう言いながら、彼は私の腕を解くと私の方へ身体を反転させ、私の顔をじっと見つめた。
そして大きな溜息を一つ吐くと、『どうなっても知りませんよ』と言って私を軽々と抱き上げた。
「え⁉ ちょっと! 葛城?」
「"のんびりしたい"と仰られたので、そうして頂こうかと思いましたが、気が変わりました。御覚悟下さいね? 雛美お嬢様」
葛城はそう言うと、浴室の扉を開け脱衣所に入ると私を下ろす。