(仮)執事物語
第8章 カウントダウンは甘く蕩けて〔葛城〕
彼は私の服を剥ぎ取る様に脱がせ、自分も脱ぎ捨てると、私の手を引き浴室の椅子に座らせた。
そして私は身体の隅々まで、彼の手で洗われ、官能を引き出されると、何度もその手でイカされてしまった。
「もう……。少しは手加減して欲しいわ……」
ぐったりと彼の胸に背中を預けながら、そうごちると彼は耳元で小さく笑い、『御覚悟下さいと申しましたでしょう?』と言って、耳を優しく噛む。
「ちょっと待って!もう、今はっ!!」
慌てて私がそう言うと、彼は喉の奥でククッと笑って『分かっております』と答えた。
「もう間もなく、夕食の時間ですから上がりましょう?」
そう言うと葛城は、私を抱きかかえて立ち上がった。バスタオルで丁寧に私の身体の水気を拭き取り、浴衣を着せてくれる。
浴衣は赤蘇芳の地色に、白いアヤメの花弁の縁が淡藤色に彩られた素敵な物だった。彼の浴衣は褐色の地色に藤色の観世水柄。
この宿は予約を入れる際に、浴衣を選ばせてくれるのだと、葛城は言った。
そこで私は気付いた。
幾ら"横根家"の名を出したからと言って、部屋数の少ないこの宿の、しかも一番良い部屋を急に押さえる事など出来る筈がない。
これは、きっと大分前から葛城がこの日の為に準備してくれていたのだと言う事だ。
そして彼が一年の最後と最初を私と二人きりで過ごしたいと思ってくれていたと言う事に。