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(仮)執事物語

第8章 カウントダウンは甘く蕩けて〔葛城〕



ゆっくり食事を愉しんでいたら、あっという間に時間が過ぎて行き、気が付けば十時を回っていた。フロントに電話を入れ、食器を下げて貰うと、また葛城と二人きりになる。

「もう、明日の朝まで誰も来ませんね」

仲居さんを玄関で見送って鍵を閉めると、彼はそう言って微笑んだ。

「雛美お嬢様、出来ましたら私は、貴女と繋がったまま、新しい年を迎えたいのですが……」

葛城は私の耳元に唇を寄せると、低い声でそう囁いた。それだけで私の身体は、じわりと熱を帯びる。これから始まる甘い時間を期待して。

私は彼の言葉に俯いたまま、首を縦に振ると、彼はホッとした様に溜息を一つ吐いた。

「それでは、温泉に浸かりながら年を越しますか?」

「え? でもそれじゃあ、逆上せない?」

「ふふっ。大丈夫ですよ? 実は、このお部屋は外にも風呂があるんです」

「え? 露天風呂はないんじゃなかったの?」

「お気付きになっておられませんでしたか?」

そう言うと彼は、浴場の外にあるウッドデッキを指さした。林から目隠しするかの様に、板塀で囲まれている。

「あの戸板の向こう側が、露天風呂になっているんです」

彼はそう言いながら、私の浴衣を脱がせ始める。

「温泉に浸かって、肌がより艶やかで滑らかになりましたね?」

葛城は手で私の背中を撫でながら、耳元で囁く。

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