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あなたの色に染められて

第14章 臆病者




『璃子。探したよ。』


目の前に大きな影を落として 京介さんが私の前に立っていた。


『あっ。……ごめんなさい。』


差し出した彼の右手を掴んで 立たせてもらい グラウンドを出る。


車に乗り込み 少し走ると

『疲れちゃったか?』

京介さんが 私に気を使ってくれる。





ベンチで遥香さんが言った言葉を何度も繰り返したけど 今の私はこの優しい笑顔を手放すことはできない。

そして 私を気づかって繋いでくれるこの手も。京介さんから離すまで繋いでいたい。

 
京介さんから最後の一言を言われるまでは そばにいさせてほしい。それが遊びだとしても。





『なぁ。璃子。ケンタどうにかなんないの?』

『……ケンタくん?』

『あいつ わざと璃子のおっぱいに顔 突っ込んだろ。策士だな。』

『まだ 4歳ですよ。いいじゃないですか。』

まだ 私に焼きもち妬いてくれるの?

『でもさぁ。4歳って言っても男だし。俺のだし。』

『私のです。』

うそ。私は全部 京介さんのモノだよ。








ねぇ 京介さん。

私のことキライになりましたか?

遥香さんと寄りを戻すんですか?

なら なぜ
昨夜 息も出来なくなるほど愛してくれたの?

あんな遊びがあるんですか?

私が知らないだけですか?

カギは遥香さんも持っているんですか?




“俺になんでも最初に聞け” って

“嘘はキライ” って


言ってくれたよね。




でもね 今の私には恐くて聞けない。



最初に聞いて

“遥香の言ってることは嘘じゃないよ”

って 言ったら全部終わっちゃうから。




いつか 京介さんが口にするその日まで 遥香さんから聴いていないふりをするから


今朝 私にくれたカギを心の支えにするから


こんな臆病者の私をもう少しそばにいさせてください。

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