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あなたの色に染められて

第2章 はじめの一歩



『璃子ちゃん次 何飲む?…。』

『…あっ…すいません。じゃあ…同じものを…』

京介さんは自分のお酒を頼む次いでに

『すいませーん!生とピーチフィズ!』

さっきから私のペースを見計らって ほどよいタイミングで声をかけてくれて

『璃子ちゃんは呑むと顔に出るんだね。』

『…もう紅いですか?』

『うん 真っ赤。』

たぶんそれはお酒のせいだけじゃなくて半分は京介さんのせい

『本当に可愛いね。』

なんてさらっと言うから

『…。』

俯き一段と頬を紅く染めていると

『ねぇ璃子ちゃんってホントに付き合ったことないの?』

ほろ酔いかげんの直也さんが私をじっと見詰めながら突っ込んできた。

『だってさぁ 可愛いじゃん。男が放っとかねぇだろ。』

『…。』

ダメだ。こういう話になると私はどうしたら良いかわからなくなってしまう。

『直也!そういう話はナシナシ。』

美紀が話を切ろうとしてくれるけど

『もしかして好きな人がいるとか?』

…あぁダメだ…。

『直也 しつこい!』

ガタン!

『すっ…すいません…ちょっと…。』

私はまた逃げ出した。

その時 一番の理解者である美紀が私の胸のうちを代弁してくれていたなんて

逃げた私は気付かなかった

***

『京介さん。璃子のことでお願いがあるんです。』

『ん?お願い?』

私はやっと一歩踏み出せた璃子の気持ちをお節介だとは思ったけど京介さんに伝えた。

『直也がさっき話した通り璃子は一度も彼氏がいたことないんです。』

『そうみたいだね。』

京介さんは腕組み俯きながら私の話に耳を傾けてくれた。

『あの子…ホントに優しいんです。人の気持ちを大事にするっていうか。どんなに素敵な人でも自分も好きにならないと付き合えないんですよ。軽い気持ちで…なんて出来ないんです。』

そうなんだ。璃子は本当にマジメさんで。

『お互い同じ気持ちじゃなきゃって。せっかく好きになってくれたのに申し訳ないって。スゴくマジメなんですよ。だから…軽い気持ちだったらやめてください。』

たとえ直也が大切にしてる先輩でも これだけはちゃんと言っておかないと

『幸せになってほしいんです。失礼なこといってるのはわかってます。でも…ゴメンナサイ。』

だって 璃子がやっと踏み出した一歩を涙色に染めたくなかったから。

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