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あなたの色に染められて

第14章 臆病者


『京介さん。そろそろご飯できますよ。』

『だってまだ雨止まないんだろ?』

『諦めてくださいって。今日は一日雨って天気予報でも言ってましたから。』

裸のままベッドから出てこない彼は

『先週も雨で今週も雨…。あーつまんねぇ。』

さっきからベッドサイドのカーテンを開けたり閉めたりしながら雨空を見上げながらに文句を言っていた。

私は彼女に会わなくてすむから少しホッとしてるんだけど

『あー野球してぇ!』

25歳の野球少年は諦めが悪い。

『もう 球納めまで出来ねーじゃん。』

のそりとベッドから這い出ると

『球納め?』

『お前知らなかったっけ?試合してそのあとボールとか道具とか一年の感謝の意味を込めてキレイにすんの。それがうちの球納め。で その後は大忘年会。』

テーブルに野菜スープとホットサンドを用意して
遅めのブランチ?っていうのかな?

やっと着替えた彼は スプーンを持ち

『いただきます!でさ。その試合が面白いんだぜ。守るのはいつものメンバーなんだけど 打つのは嫁さんとか子供とかなの。二人で一人って言うの?だから スゲー面白い。先輩の子供には必ず打たせたり わざとエラーするヤツもいるんだぜ。』

大忘年会がメインなんだろうと思ったけど彼の目の輝きを見ているとどうやら違うようで

『忘年会も嫁さんとか子供がメインのビンゴやるし デザートも出たかな。』

捲し立てるように話す彼は本当に野球が好きなんだ。

『璃子。ホームラン打てよ。バックスクリーンに特大のヤツ』

『えっ? 私も行っていいんですか?』

『お前が来なきゃ 俺の打順で誰が打つんだよ。』

彼女とか家族しか打席に立てないのに?

『行く!行きます! ホームラン打っちゃいます!』

私が出てもいいの?

『よし!今日はバッティングセンターで練習だな。』

そんなに期待をさせるなら璃子だけだよって。遥香は関係ないよって言って…

『あっ。そういえばさぁ。悪いんだけど やっぱりイヴも25もムリそうだな。』

やっぱり期待した私はバカだ

『そっか。』

『もともと師走のその辺りから凄く忙しいんだよ。24日は家族がいる人優先で25日は五十日じゃん?下手すりゃ泊まりだよ。』

どこに?

『大変だね。がんばってね。』

『ホント ごめんな。』

信じたいのに…まだ信じきれない私がいた。

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