あなたの色に染められて
第14章 臆病者
『すいませんっ!遅くなりました。』
毎日事務所の仕事で手一杯なのに
『お前さぁ 何分過ぎてると思ってんだよ。』
このオレ様川野先生のお世話は続いていた。
『ハイハイ せっかくお味噌汁持ってきたんだから冷める前にどうぞ。』
『…ったく』
相変わらず無愛想な先生だけど の学会以来 私に対してはよくしゃべりよく笑う。
『不味い。』
その口の悪さにも慣れた私は先生の机を片付けていると
『おまえ今日仕事終わったら予定あんの?』
『別にないですけど。』
『じゃ 終わったら電話しろ。』
『なんでですか?』
~♪~♪
『もしもし 川野です。……ハイ』
そうですオレ様川野ドクターは理由はもちろん教えてくれません。
『何よ。』
きっと論文の整理やらされる。だって最近ブーブー言いながらパソコンと書類をにらめっこしてる。
とんだ一日になりそうだ。
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そして仕事が終わり川野先生に電話をすると私の読みは見事に外れ 着替えて荷物を持って駐車場に来いといって一方的に電話を切られた。
『早く乗れ。』
車に乗せられて知らない道を通りすぎ着いた先は
『焼き肉やさん?』
常連なのかな 店員さんと親しげに話して勝手に注文して
『いただきまーす。』
鉄板一杯にお肉を並べた。
『あの~先生?どうしたんですか?』
『どうしたんですかじゃねえよ。…ったく』
先生はトングを私に向けて
『今から俺の質問に答えろ。手早くな。』
キラリと目を光らせる。
『はい?』
『いいから。』
お肉をひっくり返しながら覚めた声で紡ぎ始めた言葉は
『顔がブスなんだけど。彼氏にまた泣かされたのか?』
『…』
『やっぱり。』
『ちがっ…』
『 次。おまえ飯食ってねぇだろ。』
『…食べて…ます。』
『すいませーん。ご飯大盛りください!』
…バレてる
『覚悟しろ。今日は俺が納得するまで食わせるからな。…ったく そんなに痩せて…なにやってんだよ。』
何も言えなかった。先生は気付いてたんだ。
『…いただきます。』
先生はそれ以上私を問い詰めることもなくお肉をひたすら焼き続けてくれ
『ほれ寄越せ。』
残してしまった私の大盛りご飯をペロッとたいらげて
『ごちそうさまでした。』
スッと席を立ち会計を済ませていつものように足早に店を出た。