あなたの色に染められて
第14章 臆病者
『で?誰と仲良くコーヒー飲んでたのよ。』
『…。』
仕事終わりに美紀に捕まってファミレスで事情聴取を受けてる私。
『直也が見たって言ってるんだよ?誰なの?』
まるで取り調べのようにズンズンと前のめりになる美紀に後退りする私
『京介さんに言うよ。』
『あー。それはダメ!』
『じゃあ白状しなさいよ。』
少し離れた隣街まで足を伸ばしたのにまさか直也さんに目撃されてるとは…
…やっちまった。
『わかったじゃあ…』
美紀はニヤリと笑ってスマホを手に取ると
『あーもう言うよ!言えばいいんでしょ!』
この現状 脅しだとはわかっているけどひれ伏するしかない。
『早く言え。』
身を乗り出して尋問するように顔を覗かれると
『心臓外科の…』
私は素直に吐いてしまった。
『まさか川野先生?うそー!』
『美紀!声が大きいって!』
私が返事をする間も無く大声をあげて本気で驚いてる美紀
『誰にも言わないでよ!』
パシッと美紀に左腕を捕まれて睨みをきかせて
『璃子。隠してること全部話なさいよ。』
蛇に睨まれた蛙。こりゃ逃げられない。
こうなれば学会中の話から順を追って美紀に話さなけらばならなかった。
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『やるなぁ 川野先生。』
『茶化さないでよ。』
すんなりと川野先生の話を聞いてくれる美紀に私は少し戸惑った。
『っていうか意外だわ。川野先生ってナースの間ではクールでイケメンだから人気あるのよ。オペ中なんかまだ若いのにテキパキと指示出しちゃってかなりイイ男らしいよ。』
『ふーん。』
事務所での評判はあまりよくないのにナースの間ではそこまで好評価なのに少し驚いた。
『上の先生からも信頼があるから任されるオペもけっこうあるし。なるほどね…アメリカ行きのチケットを手にしたのはやっぱり川野先生だったんだぁ。』
『アメリカ行きチケットって?』
『2~3年に一度、100人以上いる先生の中から選ばれた一人がうちの病院の代表として行くの。あの脳外科の名波先生も昔選ばれたって。』
『そうなんだ…』
『そっ将来有望なわけ。ナースが放っとくはずないでしょ?それなのに選んだのは璃子なんだぁ。』
意味深に笑ってドリンクバーに足を向ける美紀。
『ついでに私のカフェラテもよろしく。』
まだまだ 今夜の事情聴取は終わりそうなかった。