あなたの色に染められて
第15章 公認彼女
私の知らない京介さんの話を聞いたあと
『ねぇりこちゃん。きょうもだっこしてみてくれる?』
スタンド席に戻ろうとするとケンタくんが私の手を引っ張った。
『もちろん!あの…幸乃さん、ケンタくんと一緒に居ても…』
『ケンタ、璃子ちゃんの言うこと聞いていい子にできる?』
『うん!いいこにする!』
大きく首を縦に振ると
『じゃあ、少し甘えちゃおうかな。豚汁のお当番が前半なだから替わったらお迎えにいくね。京介くんも出番は7回以降でしょ?』
『あぁ。よし!そうと決まれば…』
『きょうすけもいるの~!りこちゃんとラブラブがいいのに~』
京介さんは ケンタくんをヒョイッと片手で抱き上げて
『ダーメ。ほら行くぞ。』
もう片方の手は私と繋いだままスタンドへと歩んでいった。
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試合は3回ごとに選手が入れ替わる形で進んでいく。私たちの出番は7回から
途中 直也さんに連れられて美紀が打席に入ると
『美紀ー!愛してるぞー!』
なんて 直也さんからエールを送られて、顔を真っ赤にして打席に入りユルユルの球を見事にヒットを打った。
美紀に限らず打席に入る度にみんなそれぞれ思いを込めたエールを送る。それがとても楽しくて。
3人で楽しく見ていると赤ちゃんを抱っこした幸乃さんがスタンドに上がってきて私の隣に腰かけた言葉を紡ぎ始めた。
『京介くんって私たちの弟みたいなの。しょっちゅううちに来て その度にいろんな話をするんだけど 自分の決めた道に向かってまっすぐに進んでいく人なの。』
『…はい。』
『キャプテンやってたときも悩みながら必死に前を向いてみんなをまとめて格好よかったわよ。』
『キャプテンだったんですか?』
『そうよ。だから7回から出場するの。7回以降はキャブテン経験者じゃないと出れないの。だからみんな楽しみにしてるからね。』
『そんなルール知らなかったです。責任重大ですね。』
ということは私が打席に立つってことは京介さんの彼女とみんなに知られてしまうわけで
『大丈夫、俺がついてるから。』
髪にポンと手を置いて
『さて?そろそろ行くか!』
うーん!と背伸びをしながら立ち上がった彼に私の心臓はドキドキと音を立て始める。
『りこちゃん。がんばってね!』
かわいい王子さまの声援を受けて 彼の手をしっかりと握りグラウンドへ向かった。