あなたの色に染められて
第15章 公認彼女
『やだぁ…京介先輩が手繋いでるぅ!』
『あれが噂の京介の彼女?』
『アイツ 彼女連れて出んの初めてじゃない?』
私の方にチラチラと視線を向けながらザワついたスタンド席
2年前までの私のポジションに京介に手を引かれてベンチに降りてたあの娘は今回の注目の的だった。
球納めはある意味 同窓会のようなもので彼女や家族をつれて近況報告みたいな感じだった。
そこに京介が自分のユニホームを着せて連れてきたのは意味があるってこと。
私には着せてくれたことはあっても こうやってみんなの前でお披露目的に試合に出してもらったことはなかった。
『結局、ああいう娘を選ぶんだよねぇ。』
『俺が守ってやる!って感じの子でしょ?』
私の気持ちも知らないでみんなは平気で話すんだ。
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京介と高2の冬から付き合って6年だったかな。みんな羨ましがったけどホントは違った。
校内でも人気があった京介と付き合えたのはラッキーだったけど好きなのはいつも私の方
横に並んで歩いても野球のことばかり話す彼は私に全然無関心で
たしか 手を繋いだのも私からで あの娘にするように手を差し出してくれたことなんてなかった。
そんな関係だからデートの誘いもいつも私から…
初めてのキスもお泊まりも私から誘ったんだっけ
付き合ってはいたけどホントに私に無関心で
『遥香大丈夫?』
『大丈夫よ!』
でも別れたくなかったんだ。京介と付き合ってることがある意味ステータスっていうのもあったし
離れてしまったら他の女がすぐに言い寄ってくるのがわかってたから 大学まで同じにして彼を独占した
それなのにアパレルの会社に就職が決まり、配属先が名古屋になってしまった私
不安でたまらなかった私は京介に吹っ掛けた。
“今 私に告白してくる人がいて困ってるの”
友達まで使って京介の耳に入れてヤキモチを妬かせようとしたけど 京介にはこれがかえって都合がよかったみたい。
“かまってやれないし そっちにいい人いるなら”
私の思惑は見事に外れて
“別れよう。今までありがとう”
谷底に落とされたんだ。
そのあと何度も電話をしたけど出てくれなくて こっちに戻ってこの球場であの時再会するまで キレイな線を引かれた。
それなのに…どうしてあの娘ならいいわけ?
小さくて色気もなにもない小娘に腹が立った。