あなたの色に染められて
第15章 公認彼女
なんなの?あの小娘…
京介の知り合い程度にしか思っていなかった目がクリっとした背の小さい女の子。
スタンドで肩を寄せて仲良く座ってるのを見て無性に腹が立った。
『後ろに乗ると酔っちゃうから助手席ね』
“今の彼女紹介して”なんて 過去を気にしない女を演じながらわざと車に乗り込んであの娘に先制パンチした。
飲み会の席でも私にバレてないとでも思った? 二人で密かに指を絡めて微笑みあっちゃって
…ムカつく
草野球の優勝が決まってあの娘を見つければ人目も憚らず平気で抱き上げちゃって
なんなのもう。
シーツにくるまって愛しそうにキスを交わしてるスマホの中の二人
ハァ……
私の知ってる京介は跡形もなくなっていた。
だってあの娘は 私がしてほしかったことをすべて当たり前のようにやってもらってる。
私だって… 私だって…
あんな風に一度でもいいから愛されたかったんだ
それに、愛の力なわけ?最後の私の芝居もやっぱり成功しなかった。
『璃子ー!ボールちゃんと見ろよ!』
あの娘は今 打席に立っている。
背中にKYOSUKEと刻んで
『璃子ー!遠慮しないでバンバン打ってけ打ってけ!』
ユニホームがワンピースに見えるぐらい小さくて
『璃子ー!…………………………愛してるぞー!』
耳を疑うような台詞を京介から言わせちゃって
『京介さん!少し静かにしてください!それじゃ集中できません!』
ベンチからもスタンドからも冷やかされて
カキーン!
『よっしゃー!』
浅く守っていたサードの頭上を越えてツーベースヒット。あの娘は大きなヘルメットをユラユラとさせながら2塁ベースにたどり着き
『やったー!』
ピョンピョン飛び跳ねちゃって
…なんなのもう
次もその次もヒットが続けば
『璃子!走れ!走れ!……よっしゃー!!』
逆転のホームベースをあの娘が走りぬけて
そのまま彼の腕に抱き止められると スッと抱き上げられて二人で満面な笑みで微笑んでいた。
『遥香大丈夫?寒い?顔色悪いよ?』
ムカつく…あの娘が悪いのよ
泣くのは私じゃない。
どんな手を使っても 取り返してみせる。
『大丈夫だよ。ありがとう直美。』
だって 京介は過去も現在も未来も
……私の京介だから。