あなたの色に染められて
第15章 公認彼女
『ナイスラン!』
『ありがとうございます』
『璃子ちゃんが逆転してくれたから 今年は勝てんじゃねぇ?』
京介さんに手を引かれベンチに戻るとみんなハイタッチで迎えてくれた。
『まさか璃子ちゃんがツーベース打つとはなぁ。』
『マグレっていうか…ラッキーですよ。』
なんて 我ながらいい当たりだったと思うけど ここはちょっと謙遜してみんなの笑顔に酔いしれていると
『あんなど真ん中の緩い球ならもう少し飛んだんじゃねぇの?』
ホームに戻ってきた私を抱き上げるぐらいさっきまで興奮してたくせに意地悪な顔して
『もう少し誉めてくれてもよくないですか?私頑張りましたよ。』
なんて 珍しく反抗してみても
『ハイよく頑張った。エライエライ。』
私をあやすように髪をポンポンと撫でてまるで子供扱い。
『フンだ!』
プーッと膨れてみると彼は私の耳元で
『じゃあ 今ここでご褒美のキスでもしてやろうか?』
『え…ええっ!』
『ハハハッ!璃子 顔真っ赤。ゆでダコみてぇ。』
『もう京介さん!』
指差す京介さんの肩をバシッと叩いて 真っ赤な顔して睨み付けてもお腹を押さえてケラケラ笑っちゃって
『京介~イチャイチャすんな。』
ほら 監督から怒られた。
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勝利までは残りはあと1イニング
みんなお祭りといえども応援に熱が入るベンチの中
『なぁ…野球って楽しいだろ?』
京介さんは私の顔を覗きこむように首を傾げて
『はいっ。京介さんと一緒に出来てすごく楽しいです。』
『そうだろそうだろ。』
ずいぶんご満悦に腕をくみ私を見下ろした。
彼と気持ちを共有したからこそ 見下ろされた視線に私は微笑み返すと
『俺のオンナはおまえだけだからな。』
私の耳元で囁いてくれた。
京介さんも気付いてくれていたんだ。遥香さんが反対のスタンドから観戦してるってこと。
手を繋いでグラウンドに入ってきたときから痛いぐらいに感じていた視線
その視線にいつもの私なら離していたけど
今 彼の横に座ってユニホームを着てるのは遥さんではなく私。
グラウンドに足を踏み入れる前に京介さんは私に「俺のオンナをお披露目しますか」ってくれたよね。
『…ありがとう 京介さん。』
背中に刻まれた彼の名前を背負う私は京介さんの“オンナ”って証し
誰から見ても京介さんのオンナって証だから