あなたの色に染められて
第2章 はじめの一歩
私がウジウジしている間に会計を済ませてくれていたらしく
『あの私 まだ払ってなくて…おいくらですか?』
お財布片手に京介さんと直也さんの前に立つけれど
『いいから お財布しまって。』
『でも…私…いっぱい食べちゃいましたから…』
払わないわけにはいかない。せっかくの時間を私のせいで迷惑かけちゃったし
『璃子ちゃん。こういうときはね「ご馳走さまでした」って言うの。京介さんの顔たててやってよ。』
京介さんは空を見上げて私のお財布問題を気にもしない様子で
『でも…。』
『ほら 璃子ちゃん。何て言うんだっけ?』
私は全額支払ってくれた京介さんの前に立ち
『ごちそうさまでした!』
頭を深く下げると私の頭をポンポンとしてくれたのはやっぱり京介さんで
『じゃ。俺たちこっちで。』
『えっ!』
直也さんの腕に美紀が腕を絡ませて駅とは反対方向に歩き出していた。
『チョット~美紀!』
美紀は私にガッツポーズをして「がんばれ!」って口をパクパクしながら…
…やられた こりゃ完璧にやられたぜ…
俯き溜め息をつくと
『璃子ちゃん?帰るよ。』
やっぱり…
『いや…あの…。』
これはつまり…二人っきりで帰るってこと?
『俺じゃイヤ?じゃ 直也に送ってもらう?』
…でた。この優しいのに意地悪そうに微笑んで
『それは…。』
『はい。ほら行くよ。』
そう言って 京介さんは私の手をさらっと掴んで
…えっ!チョット!!待って…待って!!
『手!…大丈夫ですから!逃げたりしませんから!』
京介さんは立ち止まり私の顔を覗き込むと
『逃げたいの? 』
『いや…そうじゃないですけど…でも…彼女じゃ…ないですし…。』
繋がれた手に視線を落とすと私の小さな手は京介さんの大きな手にスッポリと包まれていて
『ゆっくり 話ながら帰ろうか。このままでね。』
そう言って繋いだ手を持ち上げてあの優しい瞳を私に向けた。
なんでだろ…。全然イヤじゃなかった。
はじめて男の人に繋がれた手は大きくてあったかくてスゴく優しい気持ちにさせてくれて
…うれしかった…
京介さんは私に大きな一歩を歩ませてくれて
二人で見上げた空には満月が輝いていて
『満月か…。』
『そうですね。』
ほんの少し京介さんの手を握り返した。