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あなたの色に染められて

第2章 はじめの一歩

『今日…楽しかったです…。』

不思議だった。気づいたら私から話しかけてた。

『璃子ちゃんとこうやって近くになれたしね。』

繋いでる手にギュッと力を込められた。

『あっ…。』

『ゴメンゴメン。俺ね 美紀ちゃんに聞いちゃった。璃子ちゃんの優しい話。』

『優しい…話?』

京介さんは視線をたまに私の方に下げながら

『そう。 人の気持ちにちゃんと向き合いたいっていう優しい女の子の話。』

美紀は私がトイレに隠ったときに話したんだ。

『話しちゃったんですか…。面倒くさいですよね…。』

きっと美紀は私のためを思って話してくれたんた。

『璃子ちゃんらしいなって思ったよ。病院で働いてるときも どんなに忙しそうでも 誰にでも変わらずにニコニコと接してるじゃん?俺はね そこに惚れちゃったんだから。』

…ほ…惚れた?!…


『…。』

京介さんは立ち止まると私の方を向いて

『つきあってほしい…彼女になって…って言っても璃子ちゃんは困っちゃうんだよね?』

もしかして私は今告白をされてるんじゃないかって

『…。』

優しい声が頭の上から降りてくる

『大丈夫。わかってるから。だから…まずは俺のこと知ってよ。お試しっていうのかな。ゆっくりさ 璃子ちゃんのペースで。それで 璃子ちゃんの気持ちが動かなかったら 潔く諦めるから。』

嬉しかった。私のことを考えてくれてるんだって紡がれた言葉で感じたから

でも…。

『…迷惑かけちゃいます。きっと…。』

そう。私は恋愛初心者。上手にこの手を繋ぐことはできない。

『いいよ。どんどん迷惑かけちゃってよ。』

見上げると京介さんは首を傾けて微笑んでいて

『…美紀と同じこと言うんですね?』

『ん?』

『迷惑かけちゃえ って言われました。京介さんならちゃんと受け止めてくれるはずだって。』

京介さんは目を細めると

『美紀ちゃん わかってるじゃん。』

…え…。

京介さんは屈み込むと私の耳元で

『好きだよ…。』

すごくドキドキした。

『…。』

『…待ってるから。』

瞬きも出来なかった。



繋いだ手が離れたと思ったら

『お試し期間中ですから。』

今度は指を絡ませて

…恋人繋ぎ?…

『…。』

私はただ頬を染めるしかなかった。

視線の先には絡めた指。

私はそっと握り返した。

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