あなたの色に染められて
第16章 クリスマスイヴイヴ
『……なぁ。』
彼は私のそばに寄り添って 全身をすっぽりと包み込んでくれた
後頭部を撫でる大きな手
『キライになるわけねぇだろ。…バカ』
『京介さん……』
彼のお腹に手を回し 胸に顔を埋めて 彼のシャツに涙のあとを残し
『俺はね。もう璃子がいないとダメなの。だから 仮でも誰かのモノになるなよ。』
首をうんうんと頷いて
『痩せたのも遥香が原因だったんだろ。ゴメンな。…気付けなくて。あの日すげぇみんなに怒られた。璃子をもっと大切にしろって。お前は何やってんだって。』
『……京介さん』
頬を両手で添えられて 親指で私の涙を拭ってくれる。
『前も言ったけど信じて。俺だけの璃子なんだから。遥香には近いうちに話すから。』
『……ごめんなさい。ちゃんと話さなくって。』
『まだほかにも内緒にしてることある?』
私の背中をゆっくりと擦りながら 落ち着かせてくれる
ちゃんと言わなきゃ。
『……あるの。』
『……マジ?』
彼の手がピタリと止まって 私の肩に手を置いて顔を見るように少し体から離すと 彼の瞳は揺れていた
『アメリカに 一緒に行かないかって』
『……アメリカ?』
先生が助手として来ないかってこと。それは諦めた留学も兼ねてとのこと。
『……そいつと一緒に って言う条件がなければすごいい話なんだろ。』
『……かも。…でもね。行かないよ。…きちんと断ってるから。』
璃子は肩に置いてある彼の手に手を伸ばし 一回りも二回りも小さな手で包み込んで
『この手が 私を求めてくれる限り 私は行かないから。』
『…璃子』
重ねられた手を見詰めながら
『この手は私にたくさん幸せを伝えてくれるでしょ。…この手にもっと幸せにしてもらうのが私の今の夢だから。』
小さな手から溢れている彼の指に祈るように額をつけて彼の温もりを感じた。
『…いいのか? 俺のためなら…』
首を横に振って
『…だって。いつも言ってくれるでしょ。“俺のオンナ”って。今の私は京介さんが夢なんです。』
『……』
『だから。この話は忘れてください。』
手をほどいて膝で立って 彼の首に腕を巻き付けて
『…大好き…京介さんが大好きです。』
『…俺は愛してる』
残りわずかな二人のクリスマスの時間 ゆっくりとお互いの気持ちを確かめるように甘い唇を合わせた。