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あなたの色に染められて

第17章 運命のイタズラ




『『おじゃまします。』』

一人で部屋には入れないと頼まれて直也と一緒についてきた。


リビングに向かうと璃子は洗面所からひょっこり顔を出して

『ねぇ。洗濯していい?一時間ぐらいかかるけど。』

さっきとは違ういつもの声のトーンで

『いいよ。テレビ見て待ってるから。』

『ありがと。』

璃子は洗濯機を回すとあちこちに置いてある雑誌やら新聞を片付けて

『もう。』なんて 言いながら。

ベッドの布団を直して キッチンの溜まっている食器を洗う

ニコニコしながら。ううん。確かめてたのかな。彼女の璃子しかこの部屋を片付けられないって

クローゼットを開けて パジャマや歯ブラシをテキパキと用意しちゃって。

まるで奥さんみたいに。この部屋のこと何でも知ってた。

『切ねぇなぁ』直也が頭を抱えて。

何度か直也と一緒に遊びに来たことがあるけど 私たちと京介さんはテーブルを囲んで 璃子の自慢の手料理でお酒を飲んでたっけ。

キッチンとテーブルを行ったり来たりしながら話に加わる璃子の笑顔が思い浮かんだ。


洗濯が終わりのアラームを告げて

カーテンレールにYシャツを一枚一枚干していく。

最後に璃子はお正月も もう過ぎたと言うのに 寝室にクリスマスツリーの形をした小さなキャンドルを置いて

『よし。…うん。完璧。』

微笑んだ。





直也の前にたち

『遥香さんに渡してもらえますか?』

両手でバックを差しだして

『…それと。これ。今の私が持ってたら泥棒になっちゃうから』

クスッと笑って京介さんの部屋のカギを差し出した。さっきまで付いていたハートのキーホルダーは付いてなかった。


『……璃子ちゃん。』

部屋を片付けながら色々と考えたんだと思う。

『…大丈夫。京介さんが思い出したら謝りながら もう一度私に持たせてくれるはずだから。』

『璃子。』

『だから。うまいこと言って返しておいてもらえますか。…お願いします。』

いつから璃子はこんなに強くなったんだろう。京介さんと出会うまで男の人ともろくに話せずに オドオドして私の後ろで隠れてたのに。

『…わかった。まかせて。』

きっと 京介さんに大事にしてもらってたんだな。

寝室で京介さんの枕を抱きしめていた璃子。



寄り添うことしかできない私たちは璃子を抱きしめてあげることしか出来なかった。

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