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あなたの色に染められて

第18章 Re:Start




『…ん?』

『……ヘルメット。』

私に被されたのは黒いサイズの大きいヘルメット。

ヘルメットの鍔をクイッと上げられて 屈んで私の目線に合わせて イタズラに微笑む。

『ウケる』

『……///へっ?』

また ケラケラと笑いながらヘルメットの上からポンポンと叩く

『ボールを運ぶのも 洗い物するのも いっつも一生懸命だな。』

ヘルメット越しに感じる手の重み。フワッと香る京介さんの香り。

今 私の目の前にいるのは間違いなく京介さんで。待ちに待った京介さんで。

『……///…はい。』

『で~も。一生懸命なのはすごく嬉しいけど。グラウンドの中を走り回るならヘルメット被ろう。ボールは危ないんだよ。』

ホントに久しぶりだった。目を細めて それはそれは優しい顔で

『……あっ。すいません。』

私はこの優しい笑顔が大好きで。 時間が止まればいいのにって。

『璃子ちゃん。口開いてるよ。』

『あっ。』唇を腕で覆って顔を赤く染めて

『いつも思ってたんだけどさぁ。コロコロ変わるその表情。すっげぇ癒される。』

『……いつも?』

『そう。 反対のベンチから』

……この直球。やっぱり威力は絶大で。

『…やだっ』

『野球見てるよりマジ 面白い。』


今なら聴けるかな。

『…足。…大丈夫ですか?』

京介さんは痛めている足首をクイクイッと曲げて見せて

『来週はスタメンで出ちゃうから。』

ほら。得意気な顔して。

『……楽しみにしてますね。でも。無理しないでくださいね。ちゃんと治してくださいよ。』

『ありがとう。璃子ちゃん。』

ううん。こちらこそだよ。京介さん。

ヘルメットを被らないで走り回る私をわざわざ探しに来てくれたなんて。

『京介ー!!』

『あーぁ。癒されタイムも終わりだ。じゃあね。』

手をヒラヒラッと降って 遥香さんのもとへ帰っていく。


『…けっこう上手に歩けるじゃん。……うっ。…治ってんじゃん』

今日は泣いていいよね。やっとだよ。
やっと溢れる涙を我慢しなくていいんだ。

だってさ。嬉し涙じゃん!!
思い出してないのに 来てくれるなんて。


よし!洗い物洗い物!



……神様
彼の足を早く治してあげてください。早く大人の野球少年に戻してあげてください。

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