あなたの色に染められて
第18章 Re:Start
『すいませーん。生おかわりで。直也は?』
『あっ。じゃあ レモンサワーも。』
練習終わりに長谷川さんに誘われて 佑樹さんと京介さん 男4人でいつもの店へ。
気心知れたこのメンツ。すげぇ久さしぶりで。
いつものように武勇伝を披露してバカ話で盛り上がる。
そんな話のなかでも
『京介。どうだ 体 大丈夫か?』
長谷川さんは気にしてる。
入院中
“ケンタが助かって俺の足が動かなくなったとしても構わないですから”
なんて言っちゃうぐらい 京介さんは長谷川さんを慕ってて
『もう全然ですよ。今日なんかヒット2本打って 盗塁まで決めちゃってますから』
『……そっか。ホント悪かったな。…体はもう大丈夫ってか…』
そう。体は大丈夫。足首のリハビリを兼ねてグラウンド内を何周も走ってる。
これだけ動けるようになったから 遥香さんの目を盗んで璃子ちゃんの元へ通うだろうな。
『ところでさぁ。ホワイトデーなんだけど。璃子ちゃんには返した方がいいの?』
『あぁ。みんなでどうぞって すげぇ大量にクッキー焼いてきたよな。』
そう。今日の本題は…もちろん璃子ちゃん。
京介さんの心の状況と彼女への思いを聞いてみたくて。
俺らが安心したいって言うか… 健気な璃子ちゃんになにか報告できないかって。
『クッキー?』
『そうそう。いろんな種類のクッキーだったよな。普通のとチョコと抹茶と あっ。紅茶味も。』
『知らねぇ。…俺食ってねぇし』
『えっ?』
…マジかよ。京介さんだけに渡せないからって だからあんなに大量に作ってきたのに。
『…そっか。』
『…なんで言ってくんねぇの?…あるって。作ってきたみたいですよって。』
『ええっ!?』
どうして 俺だけ睨むの?
『あっ。…だって。ほら。あんなにあったから 食べたかなぁ。って…』
ため息ついて壁に背中をどかっと付けて 目にかかりそうな前髪を人差し指で弄りながら
『…俺お返しできねぇじゃん。』
どうして拗ねんの?期待しちゃうぜ。俺たち。
『京介 遥香いんじゃん。』
『なに?璃子ちゃん気に入っちゃった?』
俺たちもけしかける。
前髪を 弄りながら
『…別に。』
いやいや。今日は酒の力借りて喋ってもらいますから。
俺たち3人 光が見えて ニヤついた。