あなたの色に染められて
第18章 Re:Start
『この間見たぜ。すげぇイチャイチャしてたじゃん。』
長谷川さんも気づいてたんだ。
『イチャイチャ?』
『そうそう。ヘルメット。』
『あぁ。』
思い出したのかな。クスッと笑って。
『アイツ危ねぇんだよ。グラウンドの中 走り回ってんだろ。頭に当たったらどうすんだっつうの。』
『ふ~ん。で ヘルメットプレイか。』
『はぁ?プレイってなんだよ。プレイって。』
怒った振りなんかしちゃって。耳まで赤く染めて目を泳がせてバレバレなんですけど
『…好きなの?』
長谷川さんはピッチャー時代と変わらず直球勝負で
『……。』
『遥香に内緒にしといてやるから。…どうなんだよ。』
長谷川さんからの質問じゃ答えなきゃ不味いわけで
俺たちは息を飲んでその時を待つ。
『…あの娘。…埋めてくれんの。』
俯いて フッと笑って でも寂しそうな顔して
『事故にあってから なにか足りねぇんだよ。痛っ…ツゥ』
こめかみを押さえながら
『おい。大丈夫か?』
大丈夫と手で制して
ビールをグイッと飲んで テーブルの上に腕を組んで
『…あれから …なんだろ…すっげぇ大切なもん無くした気分でさ。でも それがなんなのか わかんなくって。まぁ。ホントに無くしたのかもわかんねぇんだけど。』
『…京介』
俺たちは知らなかった。苦しんでるのは京介さんも一緒だったなんて。
『あの娘 驚くと口開けっぱなしで間抜け面なの知ってる? で 笑うとあんなに目が大きいのに無くなっちゃって。』
きっと ひとつひとつの表情を思い浮かべて
『そうかと思うとすぐにブーブー怒ってさ。……見てて全然飽きねぇの。』
苦しんでる原因がわからなくて。 でも自然と大切な場所には辿り着いてて。でもそれに気づけなくって。
ふと 忘年会のとき 璃子ちゃんを後ろから抱き締めるように座ってる京介さんの姿を思い出した。
今と同じすごく穏やかな顔してたんだ。
『好きか…それはわかんないけど……』
……けど?
『……あの笑顔は見てたいな。』
やべぇ。…俺泣いちゃうかも
『京介さん!飲もう!飲んじゃおう!!』
『うるせぇよ。直也!』
『すいませーん!さっきのレモンサワーとビールまだですかぁ?』
二人がもとに戻るまで
京介さんの記憶が戻るまで
俺は祈るよ
幸せになれます様に……って