あなたの色に染められて
第18章 Re:Start
『じゃーんけーん !』
『やだぁ。わたしぃ~』
日差し溢れる3月中頃 アイスが食べたいと直也さんが言い出し 負けた私が近くのコンビニまで買い出しに。
『じゃあ コンビニ着いたら電話しますから。ちゃんと出てくださいよ。』
一人 トボトボとグラウンドを出ていく。
なんで負けちゃうかなぁ。一発勝負で私以外グーなんておかしいでしょ。何人分買ってくればいいのよ。
『なーにブツブツ言ってんだよ。』
『…わあっ』
頭をポンと叩いて並んで歩き始めるのは
『あっ。』
京介さんなわけで。
『また 口開いてる。…ハハッ』
何度目だこのくだり。
っていうことは?
とっさに前後左右すべての方向を確認する。
『なにビビってんだよ。』
『……だって』
いつでもすぐに見つかっちゃうから。
『ほら。こっち』
京介さんは車の鍵をくるくる回して
『ええっ?』
『早く。』
助手席のドアを開けて私を促す
2ヶ月ぶりに乗った車のシートはやっぱり 遥香さん仕様。小さな私が凭れると ふんぞり返っているかのよう。
あ~ぁ。
シートを直すわけにはいかないので 腹筋を使って少し前のめりに座っていると
『うわぁ!!』
突然 運転席に座った京介さんが覆い被さってきた
…ウソ
ヤバい! …心臓が口から飛び出るかも
…どうしよ。
目をギュッと瞑って両手を上げて 私の鼓動は京介さんにも聴こえてしまうんじゃないかと思うほど鳴り響き
あっ。
…この香り。そう。シトラス系のこの香りが私の鼻を擽って
……京介さん
たった一瞬なんだけど。…ほんの一瞬なんだけど 私はこの胸に抱かれていたんだって。愛されてたんだって…
ゴンっ!
『イテッ』
思い出に浸っている私の頭にシートがぶつかる
『シート。ほら。調節してやっから。』
そう。シートのレバーで調節してくれてた。
『…あっ。はい!!』
京介さんは顔中 真っ赤に染めている私を見てクスクス笑う。
『……ありがとうございます///』
まともに顔をあげられない私。
『じゃ。コンビニまでドライブね。』
えっ?
『そこなら 遥香も追って来ないだろ』
両手でハンドルを握り とびきりのスマイルで私の顔を覗く京介さん。
『はい!』
きっと私も京介さんに負けない笑顔で返事した。