あなたの色に染められて
第19章 約束
『うんと 直也さんがこれと 佑樹さんはこれでしょ。あれ?』
『ほら 先輩のはこっちにあんぞ』
『あっ。それそれ。』
『で、璃子ちゃんはどれにすんの?』
ショーケースの中を隅から隅までのぞきこんで アイスを選ぶのに こんなにニコニコしちゃって
『……あっ。…うそ。』
お気に入りのアイスでも見つけたのか?それはそれは嬉しそうに カップのアイスを手に取り
『京介さん。…これにします。』
そのアイスを愛しそうに眺めながら。きっとこれがさっき答えなんじゃないかって。
『アフォガード?』
そんなにお気に入りなら また今度差し入れでもしてあげたくて。それぐらいいいよな。
『これはね…私の恋の味なんです。』
…恋の味。相変わらずかわいいこと言うんだ。
『いいよ。溶けちゃうから早く帰ろうか。』
大きく首を降って ニコニコして
正直 愛しくって堪らなかったんだ。
入院中にみんなに埋もれて 見舞いに来てくれた璃子ちゃん。
色の白い小さい子。色素全体が薄いのかな。目も髪も茶色くってふわふわして。遥香とは反対にいるタイプ。
いつも笑顔を振り撒いて表情をコロコロ変えるあの娘に惹かれてくのは ある意味必然で
どうやって話しかけようか。何を話そうか。それって中学生みたいだろって。こんな感情はじめてだった。
『京介さん。アフォガードの意味って知ってます?』
流れる景色を眺めながら 彼女はゆっくりと話始めた。
『アフォガード?さっきのアイスの?』
なにかを思い出しているような寂しげな表情で 窓の外を見つめたままの彼女。
『…うん。甘~いバニラジェラードに ほろ苦いエスプレッソがかかってるの』
…そっか
『だから恋の味なんだ。璃子ちゃんみたいな甘い女の子と大人の男。って感じかな。』
璃子ちゃんにとっての“恋の味”なんだ。
『……はい。…溺れるっていう意味なんですよ。』
赤信号のタイミングて 発せられた “溺れる”って単語。璃子ちゃんからは なかなか想像できない大人の意味で。
それは現在進行形なんじゃないかって。
そしたら俺はこの気持ちを踏み止めなきゃいけない あの娘を困らせちゃいけない。
『…璃子ちゃん。……彼氏いるの?』
聴かなきゃよかったんだ。だってそうだろ。俺はこの娘を愛し始めてしまってたから。