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あなたの色に染められて

第19章 約束




『It was a pleasure meeting you.』

『I'll be seeing you.』


『お疲れ様です。先生』

『お疲れ。…悪いな。明日も付き合わせちゃうけど。』

『ホントですよ。この仮はきっちり返してもらいますから』

『ハイハイ。』

今日も先生のお供で都内のホテルで開かれているパーティーに参加した。

『いったん外で飯でも食って戻る? 俺さ立食だと腹減って寝れないんだよなぁ。』

『そうそう。食べた気しないんですよね。』

相変わらず“ビジネス彼女”の私は先生の半歩後ろを歩く。

『悪い。ちょっとトイレ。』

『はーい。』

私はエレベーター前の白い大きな柱に凭れかかり先生を待つことに

このホテルのロビーは吹き抜けで解放感があり 中央には階を跨ぐほどの大きな木が鎮座している

…疲れたぁ。ホテルに部屋とっておいてもらってよかった




『……璃子…ちゃん?』

呼ばれて振り返ると

『…あ…。』

そこには京介さんと遥香さんが立っていて

『こんばんは。璃子ちゃん』

『…こんばんは』

腕を組んで寄り添う二人
笑顔の遥香さん

どうしてこのホテルに…

『璃子ちゃん結婚式にでも出てたの?キレイなドレス着ちゃって。』

『…いえ。……あの。』

イヤな予感がした

『ねぇ。どうだった? 料理とか雰囲気とか…よかった?』

だって 遥香さんが胸に抱えているパンフレットの表紙のモデルさんは

『………えっ。』

真っ白なウエディングドレスを着て微笑んでいて

『私たちもここで式を と思って見に来たんだけど…。ねっ。京介。』

『……。』

……ウソ。
遥香さんの勝ち誇った笑顔がすべてを物語っていて


京介さんが私になにか話している

でも私には ただ映像が流れているだけで

ここは音も色もない モノクロの世界で

私の目線にある京介さんのポケットの中

たくさんの幸せをくれた 大きな手

……絡めた指

繋がれてると思って信じた赤い糸

切れたのか それとも 元々繋がれてなかったのか



『…子。お待たせ。…璃子?』

『……先生』

…お願い…誰か 助けて

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