あなたの色に染められて
第19章 約束
マジかよ…
ロビーに戻り 俺の目に飛び込んできたのは 璃子と彼氏とその元カノ。
…最悪。なんで こんな所にアイツらがいんだよ
あんなにわざとらしくベタベタして
あ~。腹が立つ。
『……璃子。お待たせ。』
……ん?
『……璃子。』
肩に手を置いて振り向かせると
『……先生』
……えっ。いつものように微笑んではいるけど 目は動揺し唇は震えて
ヤツらに視線を向けると
……ウソだろ。
それはどう見てもウエディングのパンフレットで
……マジか
璃子はこんな状況なのに微笑んでいて
……お前……バカじゃねぇの。
俺は とっさに璃子の肩を抱き寄せた
『…入院してた森田さんですよね。お久しぶりです。体の方はもう大丈夫そうで。』
『あ~。その節は…もう全然治りました。遥香。璃子ちゃんの病院の先生だよ。』
一番肝心なところが治ってねぇんだよ
『こんばんは。知ってますよ。よく病院で璃子ちゃんと仲良く話してるところ お見かけましたから。ラブラブなんですよねぇ。』
なんだよ。この女。
璃子は俺の腕のなかで小刻みに震えて
『…すいません。璃子が体調悪いので…失礼させていただきます。』
『あっ。…璃子ちゃんごめんな。じゃあ また球場で。……失礼します。』
早くこの場から璃子を連れ去りたくて タイミングよくきたエレベーターに乗り込んだ。
事故以来 璃子から記憶を無くした彼氏の話をよく聞いていた
最初の方こそ無理して笑ってだけど 最近じゃ聞きたくもない俺に 記憶の戻らない彼氏との仲睦まじい話をニコニコして話してくれちゃって
自分とのことよりも ヤツの体調ばかりを気にしてる璃子
俺はヤツに嫉妬までしてたのに
そんな健気な璃子を俺はここ3ヶ月見続けてきたんだ。
なんの仕打ちだよ。璃子がなんかしたか?
病気とはいえ どれだけコイツを苦しめればいいんだよ…
おぼつかない足。焦点の合わない瞳。
とりあえず 俺の部屋に入り ベッドの上に座らせて冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだし璃子の膝の上に置いた。
だから 俺のオンナになれって言ったんだ。