あなたの色に染められて
第19章 約束
俺は 部屋の奥の椅子に腰かけて 鏡のように写し出されてる窓から璃子の様子を見ていた。
璃子はピクリとも動かず 涙も流さず ただ一点を見つめていて
本当なら 今すぐにでも俺の胸に抱きしめたい。
『……先生。……ありがと』
どれぐらい時間がたったのかな。もう何時間も違う世界にいた感覚。
夢だったらいいのにって何度も手の甲をつねってみたけど ちゃんと 心と同じように痛みはあって
現実なんだって突きつけられる。
先生は窓際の席に座って首を傾げて私に
『……バーカ』
ホントだね。……バカでした。
『……もう 諦めるよ。』
『……璃子』
『…フフッ……さすがに結婚するんじゃね』
……終わったんだ。
『……初恋は実らないって言うし…』
ネックレスに指をかけトップに指を添える。
京介さんに付けてもらったあの日から 一度も外していない
付けてくれるときに私の首筋にキスを落としてくれた感触が体にまだ残っていた。
一緒に居られないときでもここにいるよ。って。守ってあげてるよって
二人の気持ちを確かめあった証し
…もう とっくに終わってたんだ
…記憶を無くしたあの日から
あの優しい笑顔も
野球をしたあとの汗の匂いも
私のすべてを包み込んでくれたあの大きな手も
もう 私のモノじゃないんだ
そして私も
京介さんのモノじゃなくなってたんだ
見てられなかった。
クスクス笑って 天井を見上げて 涙ひとつ溢さないアイツ
なんで 笑ってんだよって
なんで 泣かねぇんだよって
気づいたら 璃子を胸のなかに抱き寄せてた。
『……お前って本当にバカだな』
『……先…生』
…やっとかよ
『…いいから泣け。俺がついてるから』
『……うぅっ。…うっ』
だから言ったろ
『俺がずっと璃子のそばについてるから』
『……先…生』
『…アイツの代わりはイヤだけど まぁ なる気もないけど』
『…うぅ』
『もう俺から離れんな。…って言うか』
もう 止めらんねぇよ。俺。
『……』
『……もう離さねぇから』
『………はい』
こんなタイミングで言うのは反則かもしれないけど
『……お前をアメリカに連れてくから』
『……達哉さん…』
璃子はうんうんと首を何度も縦に振って 俺の背中に腕を回してきた。