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あなたの色に染められて

第20章 点と線




「ねぇ。りこちゃん。オレときょうすけどっちがすき?」

「う~ん。そうだなぁ。」

膝の上で甘えた顔して胸に顔を埋めるケンタ。

……なんだよこれ

「ほんの少しだけケンタくんの方が好きかなぁ。」

「やったー!きょうすけにかったぁ!!」

……なにこれ?

どうして俺が登場すんのよ。

『……長谷川さん。』

『いいから。最後まで見てろ。特に8回裏。』

8回裏?

『……去年の球納めだよ。京介さん。』

そうだよな。それしかないよな。

ってことは……

……マジ

『そうだよ。京介。……璃子ちゃんのユニフォーム。』

…俺の……オンナって…こと?

『長谷川さん。早送りにして8回裏にしちゃおうよ。』

なんだよ。8回裏になにがあんだよ。

『どうする?京介。』

ゆっくりなんて見てられねぇ。

俺は頷いて

『長谷川さん 見せて。8回裏。』

リモコンのボタンを押しながら長谷川さんは

『…お前さ これ見てなんか思い出さない?』

首を横に振り

『……なんも。』

画面に8回裏の様子が写し出される

……ウソだろ。

俺に手を引かれてグラウンドに入ってくる璃子ちゃん。

俺が人前で堂々と手 繋いでるなんて……

音声には俺たちのことを冷やかす声まで入ってて

『あっ!ほらみて~ りこちゃんはだよ。』

ケンタは俺の膝の上でピョンピョン跳ねながら拍手しちゃって

バッターボックスに立つのは 俺のユニフォームをワンピースのように着て 大きなヘルメットを被り バットを構える……璃子ちゃんだった。

『京介さん。この意味わかるよね?』

直也は今にも泣きそうな顔して

……。


画面からはきっと俺の声なんだろうな。バットを降れだの ボールをよく見ろだの叫んでて

「璃子~。…………愛してんぞ~!」

……頭 痛ぇ。

……愛してる …か。俺が人前でこんなこと言っちゃって

2塁ベースの上でケンタみたいにピョンピョン飛び跳ねて

ヘルメットで顔は見えないけど きっといつものあの満面な笑みで


ホームの必死に走ってくる璃子ちゃん

俺は腕をグルグル回して

ホームベースを駆け抜けると

俺の腕にすっぽりと収まり

……わかんねぇ。

抱き上げて

微笑みあって


俺……璃子ちゃんの

……オトコだったんだ。

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