あなたの色に染められて
第20章 点と線
『幸せそうでしょ。この二人』
幸乃さんがゆっくりと話始めた。
『璃子ちゃんにね このDVD見せたいって
みんなでずっと言ってたの』
幸乃さんはちーちゃんをあやしながら
『でもね 自然に思い出さなきゃダメだからって。体に負担かけちゃうからって』
涙をうっすら浮かべて
『何度も何度も聞いたのよ。でも毎回返事は同じで。 京介さんの体が治れば 私のことなんていいからって』
璃子ちゃんはいっつもそうだったよな。
『いつか思い出してくれたらそれでいいって…… そう 笑ってね。聞いてくれなかったのよ。』
京介さんはケンタくんを膝から降ろして 頭を抱えて
『璃子ちゃんはいっつも自分のことよりも記憶のない京介くんが優先だったの』
幸乃さんの優しい声が俺たちを包む。それはまるで璃子ちゃんの心の声を聞いてるようで
『これ見ても まだわからないんだよね。…思い出さなくても これが現実だったのよ』
佑樹さんが京介さんの肩に手を置いて
『遥香じゃないんだよ。お前のオンナは璃子ちゃんだったの。』
京介さんはさらに頭を抱え込んだ
『……わかんねぇよ。』
大きく肩で息を吐いて
『だって……俺の頭のなかに…璃子ちゃん居ねぇんだよ。』
このDVDを見たからって “はい。思い出しました”なんて…そう上手くはいかないもんだよな
そんなに簡単にいったらとっくに思い出してるよな
『それに…… 彼氏いるじゃん。…美紀ちゃんも言ってたろ。』
『……それはね。京介さんと遥香さんが結婚するのを知って… そんで…今の彼はボロボロになった璃子ちゃんを救い出したんだよ。』
限界だったって美紀は言ってたよね。可哀想で見てられないって
だから 差しのべてくれた手を掴んだって
『……ハァ。……マジでわかんねぇよ。もっと早く知らせてくれればいいじゃん。』
『新しい彼が出来ても 璃子ちゃんの京介さんへの気持ちを汲んで 美紀が見せるなって。……だから』
美紀は親友として 璃子ちゃんの幸せを一番に願ったんだ。
でも もうそんなことは言ってられない。
『京介さん。璃子ちゃん来週アメリカに行っちゃうんだよ。』
『……。』
『お願いだから…お願いだから…』
俺は京介さんの両肩を掴み
『お願いだから……思い出してよぉ…』
きっと 美紀に怒られる
すげぇ 怒られるだろうな